越前・奥越の冬の味覚 「上庄さといも」
水洗い中のさといも
福井の奥越地方の上庄地区で穫れた里いもは、包丁で皮を剥かずコロコロと転がして皮をむくことで薄皮を残して料理するのが一般的です。
私たちは“洗い子”と呼んでいて、煮物にすると最高に美味しいです。
上庄里いもは、こうやって水で洗うだけで包丁で皮ムキしません 同じ奥越地方でも、この上庄地区でとれた在来種は肉質のしまりが良く、皮は柔らかく濃厚で甘みがありとても美味しいので「上庄さといも」のブランドで生産・販売されています。
「どっちの料理ショー」や「ためしてガッテン」などのテレビ番組にも紹介され、全国的に評価が高くなっていますが、雪深いこの地区も高齢化が進み、生産者は減る一方です。
左写真:上田農園
そんな中、里いもの生産を通じて地域の活性化をはかっているのが上田農園の上田輝司社長です。
上田農園さん 上田農園 代表取締役社長の上田輝司さん
この地区の若手農家はたった4人、上田さんは高齢のため生産ができなくなった農家の委託を受けて「上庄さといも」を栽培しています。
また6次産業化にも取り組んでいらっしゃいます。年間を通じて、すこ(酢づけ)やころ煮などの加工品を出荷できる体制を確立しました。
今までさといも農家は、せっかく手間暇をかけて生産しても、どうしてもクズ・キズものが半分くらい出るので補助金のない経営は成り立ちませんでした。
加工販売したところで、人件費で消えてしまうそうです。
それでも社員2名・パート10名あまりを雇い入れ、地区全域からクズ・キズありの里いもを集めて加工することで、地域に産業が生まれ上庄地区の地域活性化に繋がります。
地域の方々が元気になることは上田さんにとっても地域にとってもお金に変えられない喜びなのです。
親芋から子芋・孫芋を外しているところ 生産は社員2名とご夫婦,繁忙期にはシルバー人材派遣などを利用しています。
収穫された里いもを手作業で外し、選別機にかけます。洗い機にかけた後、1時間ほど天日で乾燥させてから箱詰めして出荷します。
天日乾燥で仕上がる「上庄さといも」
通常、里いもは連作障害があるので同じ圃場では4年に1回作付けをしていますが、上田さんは8年に1回しか作付していません。
里いもの後、米・大麦・大豆などを作っている間に土が細かくなり、質の良い里いもに育つのだそうです。
農薬はほとんど使わず,地元の牧場の堆肥クズ大豆や稲わらを圃場に漉き込むんだ有機肥料で育てています。
洗ったあとは天日干しします 里いもの圃場 今後は里いもの生産量を増やし、商品加工部門を充実させネット通販にも力をいれていきたいとのことです。
私たちの 九頭竜川下流域農業用水再編推進協議機会では、農業用水のパイプライン化などハードの整備に重点をおいていますが、自分たちの地域に伝わる伝統野菜や文化を自分たちで守っていこうと自らアクションを起こしている上田さんのような方々をサポートし、その活動を広め伝えていくことはとても大切なことだと思っています。
福井県の農業振興のためにコツコツとできることから地道な努力を始めたいと思います。
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