いとしの君のほほにアザができた。
あなたは、これを別人と見るだろうか。
デンプンが消化されてできたマルトース(グルコースが2個つながった糖)は、小腸上皮細胞表面のα―グルコシダーゼの2個のポケットにグルコースが2個つながったままはまり込む。
それぞれのポケットはグルコースをいとしの君と認識しているのである。
さて、グルコースとDNJの構造を比較するとそっくりなのである。
異なっている部分は赤で示したごくわずかで、いわばアザができた程度である。α―グルコシダーゼは寛容なので、DNJがやってくると、おぉ!いとしの君よっとポケットに入れてしまう。
こうなるとマルトースはポケットに入れず、分解を受けられない。すなわち、グルコースはできないのである。
これが桑の葉のDNJによって血糖値が上らない理由である。
アザができただけで、この人は私のいとしの気味ではないと判断されてしまうと、DNJによるα-アグルコシダーゼの活性を阻害することはできない。
α―グルコシダーゼがちょっとぐらいアザがあったっていとしの君と思ってくれているので、われわれは血糖値を下げるのにDNJを使うことができるのである。
補足:
酵素は自分の基質を認識するのに少しあいまいな部分があります。このあいまいな部分を利用して、阻害剤を作ることができます。この方法は薬の開発にも使えます。原三郎さんのプロフィール
NPO法人 日本マルベリークラブ
代表理事 President · 2004年6月から現在
桑・カイコ・絹の新しい機能の解明とその利用方法の研究、それらの効果の普及活動
Studies, development and promotion of new functions and utilization of mulberry, silk-worm and cocoon.
コメント