市川 昭子さんの写真をシェアしました。
作家・市川さんの文章はいつ読んでも心が動いていきますね!
スバラシイ!!
『街が威信を賭けて完成させた芸術の丘』Mont des Arts/Kunstberg in Bruxelles
ブリュッセルの街の中心グランプラスの南、小高い丘の上に広がる一帯は約半世紀の間放置されていた1910年に開かれたユニバーサル博覧会の会場の跡地でしたが、戦後、街は一大プロジェクト組み、1954年から約20年間を掛けて丘の改修を始めたのです。それも「芸術の丘」と称した壮大な計画でしたから、ブリュッセロワたちも拍手喝さい。協力を惜しまなかったと伝えられます。
また、工事を始めてから20年後、有名な造園家ルネ・ペシェールの設計による階段式のフランス庭園が設けられたり、1904年に建設された王宮はじめ王宮図書館などが建つロイヤル広場に手が加えられ、アルベルティーヌ広場からロワイヤル広場にかけて広がる一帯に、既にあった王立美術館の他、楽器博物館、ベルヴュー美術館などを新たに開設。
丘からは王宮はじめ大聖堂を眼下にできる眺望の良い「芸術の丘」として生まれ変わったのです。
★写真は王宮図書館の一角に建つパレ・デ・コングレPalais des Congresです。ここは現在、王立図書館と議会宮殿、会議室などの多目的ホールとして使用されていますが、この館を有名にしているのは、ブリュッセルが生んだ偉大なる現代画家ポール・デルヴォーの作品、それも長さ41㍍という大壁画「地上の楽園」が飾られていることです。
1959年、彼の62歳の時の脂の乗り切った頃の傑作として今なお反響の多い作品ですが、彼は作品が完成した2年後、1961年に、日本国際美術展の特別展示『ベルギー絵画の10年展』にも出品をした日本でも多くのファンを持つお馴染みの画家です。
後日、彼の作品について解説致しますが、ブリュッセルには中世の画家たちを多数輩出したアントワープと同様に、その他にも世界的に活躍する現代画家が輩出されています。
ベルギーを代表するシュルレアリズムの画家、ルネ・マグリットもその一人ですし、アンソール、ワウテルス(過日紹介済みですね)などやはり多数の現代画家が生まれ育っています。
その他、建築家アールヌーヴォーの巨匠オルタもブリュッセルを根拠地していますし、大哲学者エラスムスなど数えきれないほどの文人・芸術家を輩出しているのです。
それはベルギーという国の文化芸術に対する思い、あるいはその世界の理解の深さ、または、国も街も芸術家たちへの尊敬の念が大きかった…。画家として独り立ちするまで、彼らを擁護し援助し続けた。その結果世界に誇る画家や建築家、デザイナーを輩出し続けることができた。
また、人が“生きる”という過程のなかでいかに芸術という世界が必要であるか、子供たちの情操教育をするうえで、不可欠な分野であることを国民は知っていたからこそ、芸術の丘のように環境を整え、彼らが心豊かな人間に育つための器を用意したのです。
ですからベルギーの国には中世から現在に至るまで、この街と絶え間なく大物芸術家が育ち輩出され続けているのです。
この丘にしても素晴らしい企画の元で創られたのです。そして、市民たちの憩いの場としてだけではなく、旅人にとってもブリュッセルという芸術あっての街を理解するには、格好の丘として、こうして爽やかな風の中に広がっているのです。素敵です…。
《下記はブリュッセルの街にある主な美術・博物館23館です》
■王立美術館別館マグリット美術館■ブリュッセル市立博物館■衣装とレース博物館■ブリュッセラ1238博物館■王立美術館■楽器博物館■ベルビュー博物館■ベルギー漫画センター■ジャック・ブレル資料館■自然史博物館■王立トーヌ博物館/劇場■ジジェ漫画博物館■サンカントネール博物館■王立軍事歴史博物館■ブリュッセル・トラム博物館■ベルギー鉄道博物館■エラスムスの家■オルタ美術館■オートリック邸■マグリットミュージアム(マグリットの家)■ダヴィッド&アリス・ヴァン・ビューレン博物館■アントワーヌ・ウィールツ美術館■イクセル美術館
★画像、記事の著作権は全て私に帰属しております。転載・転用、ダウンロードは固くお断りいたします。また、シェアに関してはこの限りではなく誰もが可能ですが、その場合、一言頂きたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
(トラベルライター、作家 市川昭子著)
コメント